かわいいきりちゃん。
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髪を洗う時
きり丸は空を見上げた。
今日もよく降る。近頃、ずっと雨なのだ。
「先生、よく降るね」
部屋の隅で壁にもたれて本を読んでいる半助に声をかける。
「ああ・・・っ!!」
声をかけられ顔を上げた瞬間、首筋に痛みが走った。
「どしたの?」
キョトンとして問えば、半助は首筋を押えながら
「いや、首がな・・ちょっと・・・」
と、よくわからない事を言う。
要するに長い間、下を向いて本を読んでいたのに急に顔を上げたので首筋がつったのだ。
「じじくさい・・・」
きり丸はあきれた声を出した。涙目の半助は抗議する。
「そうは言ってもなぁ、お前、ここんとこずっと雨だからさ」
「雨だからってなんなの?」
「雨が続くと首や腰が痛くなりやすいんだよ」
「やっぱり、じじくさいね」

小さなきり丸には天気の影響なんてわからない。あきれた声のまままた窓から空を見上げた。本当によく降る。
「そうだ!なぁ、きり丸!銭湯に行こう!!」
半助は不意に言い出した。
「銭湯?なんでまた?」
「大きな風呂でゆっくりと手足を伸ばしたいんだよ」

言うと半助は早速、準備を始めた。
風呂敷に着替えやら手拭いやらまとめて包む。
「ほら、自分のは自分で持つんだぞ」
そう言ってきり丸にも風呂敷を差し出した。
「ホントに行くの?」
「ああ!」

張り切っている半助には悪いが正直、行く気がしない。こんな雨の中出掛けて行くのも億劫だし、帰り道を考えるとなおさらだ。せっかく、きれいに洗ってあったまってもまた雨の中を歩かないといけないのだ。それに何より贅沢だと思うのだ。
「ねぇ、先生。贅沢だよ?」
「なぁに、毎日、がんばっているんだ。風呂くらいはいったってバチは当たらないさ」

半助の意思は固いらしい。
こうなっては仕方ないので、きり丸も草履をはいた。
『先生、案外、頑固だからな』
外はまだ夕方と呼ぶにも早い時間である。本当にこんな時間から銭湯なんて贅沢にもほどがある。日があるうちは働くべきなのだ。きり丸は両親からそう教えられてきた。
気が進まないが、うれしそうな半助を見ているとだんだん自分も楽しくなってきた。
『たまにはいいかもね』
二人で銭湯に行くなんて久しぶりである。いつもは土間にたらいを置いて流すのみ。たらいはきり丸には少し余裕があって、半助にはきつい。その中で頭からお湯をかけてもらい髪を洗ったり、体を洗ったりするのだ。だから、ゆっくりつかるという事は出来ない。
自分でもそうなのだから半助ならもっとそうだろうと思った。
『そうだ、いいこと考えた』
一つの思いつきで急に銭湯が楽しみになるきり丸だった。
「先生、銭湯、久しぶりだね」
「そうだな、帰りに牛乳を飲もうな」
「うん!」

本当の事を言えば、牛乳よりもラムネとかの方がいいのだけど、半助は銭湯の帰りは牛乳と決めているようなのだ。別に牛乳も嫌いじゃないし、お風呂あがりは何を飲んだっておいしいのだ。
銭湯は時間が早いせいか、まだ誰もいなかった。
「大人と子供、一人づつお願いします」
見ればわかるのに律儀にいう半助。
「洗髪は?」
「お願いします」

半助が番台でお金を払っている間にきり丸はもうさっさと脱いでいた。
「先生、早く!!」
「きり丸、流してから入るんだぞ」

銭湯でのマナーを教えておく必要がある。
「わかってるよ!」
半助を待たずに風呂場へ入って行くきり丸。初めは乗り気ではなかったが、やはり、10歳の子供。日常と違う事は楽しいのだ。
「ほら、すべるぞ」
「はぁい」

自分たち以外は誰もいない。それもまた、きり丸には楽しいことの一つだった。
「誰もいないねぇ」
「いいだろ、この時間の銭湯は」

どうやら半助はそれを狙ってきたようだった。この時間なら誰もいない。それをちゃんとしっていたのだ。
「さ、髪を洗ってやるから」
「うん」

いつものように半助に頭を預ける。お湯を流されて洗い終わると少し軽くなった気がするほど気持ちいい。
洗い終わるときり丸は言った。
「ねぇ、先生。今日は俺が先生の髪、洗ってあげるよ」
「え?出来るのか?」
「大丈夫だよ。だって、学校では自分ひとりで洗っているんだから」

言われてみればそうだ。学校では自分で髪を洗っている。そして、まっすぐな綺麗な髪を保っているのだ。もしかしたら、自分よりずっと上手に洗うかもしれない。
「じゃあ、お願いします」
半助はそう言ってきり丸に任せることにした。
「はぁい!」
洗面器でお湯を流される。顔にかからないように配慮してくれるのがいい。自分がきり丸の髪を流すときはもっと乱暴なのに誰に教えてもらったんだろう。
次に洗い出してくれる。
手が小さい。
そんな事は分かっていたことだが、こうして髪を洗ってもらっているとそれを実感する。小さな手は力も弱い。そう言えばきり丸はよく
「きつくしないでよ!」
と洗髪の途中で苦情を言う。なるほど。こういうことか。きり丸は普段、自分で洗う時はこんな力で洗っていたのか。
『何事も体験しないとわからないものだなぁ』
ふっと見ればきり丸は真剣な顔で丁寧に洗ってくれている。
「先生、髪が傷んでるねぇ」
「ははは、どうしてかな?髪質が悪いのかな」

普段、家にいるときは自分の髪もきり丸の髪も半助が洗っている。それなのに、きり丸の髪はまっすぐでさらさら。自分の髪は傷んでぼろぼろ。
「また、タカ丸さんに怒られるよ」
「そうだなぁ。タカ丸は私を目の敵にしてるからな」
「そんな事ないよ。間切さんだって怒られてたよ」
「ははは、そっか」
「でも、不思議だよね。先生と俺もそうだけど間切さんと網問さんもそうだよね。間切さんの髪は傷んでるけど、網問さんはきれいだよね」
「言われてみればそうだよな」
「兵庫水軍の人は髪が傷んだ人が多いような気がするけどね」
「それは毎日、太陽と海風にさらしてるからだろうなぁ」
「じゃあ、網問さんは?」
「うーん、やっぱり髪質かな?」

半助は心地よかった。
いつもは下から聞こえてくるはずのきり丸の声が今日は頭の上から聞こえてくる。その声が風呂場で反共しなんだか幸せな気分なる。
風呂場で声が反共することなど当たり前なのにそれが幸せに感じる。たぶん、それはそんな事をのんきに考えていれる今の境遇が幸せなのだということだろう。
「ながしまぁす」
ぼんやりと会話を楽しんでいるとそんな声が聞こえた。
「目をぎゅっとね」
これは普段、半助がきり丸に言ってることだ。
「はぁい」
半助もきり丸を真似して「は」と「い」の間に「ぁ」を入れてみた。
目をつぶる前、目が合った。
「ふふふ」
「へへへ」

お互いなんだか照れくさくって笑った。

『今日は思いつきで来たけど、なんだかとても充実したなぁ』
脱衣所で並んで牛乳を飲みながら半助はしみじみと思ったのだった。






あとがきです。
今回のネタはいちごチョコさんにいただきました。
ありがとうございます。
いろんな方にもらえて幸せな私です。
これからも頑張りたいのでよろしくお願いします。
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この記事に対するコメント

ネタを提供…というより、もしかして私は自分の読みたいのをリクエストしちゃっただけなんじゃないか!?と何だか申し訳ないぐらいです。ありがとうございました。
>牛乳を飲もうな!
なんて子どもみたいにワクワクしている先生かわいすぎるっ!!
きり丸に洗ってもらって頭が泡あわになっているのをつい想像しちゃいました。
【2009/05/29 23:12】 URL | いちごチョコ #- [ 編集]

Re: タイトルなし
> ネタを提供…というより、もしかして私は自分の読みたいのをリクエストしちゃっただけなんじゃないか!?と何だか申し訳ないぐらいです。ありがとうございました。
> >牛乳を飲もうな!
> なんて子どもみたいにワクワクしている先生かわいすぎるっ!!
> きり丸に洗ってもらって頭が泡あわになっているのをつい想像しちゃいました。


ありがとうございました。
これからもなにかあれば、ぜひお願いします。
お風呂上がりには牛乳ですよ。
【2009/06/02 14:05】 URL | ゆっち #- [ 編集]


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