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かわいいきりちゃん。
忍たまのきりちゃんメインのブログです。
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だっこしてあげる
今日のバイトはイマイチだった。疲れた割には儲からなかった。こんな日はとっても憂鬱だ。道端の小石を蹴ってみる。
『売り子のバイトもなぁ・・・』
今日のバイトは団扇売り。これからの季節のために売り始めるのだけど、まだ早かったのか売れ行きはイマイチだった。売り子のバイトは歩合制で売れればいい稼ぎになるが、今日みたいにあまり売れなければ内職の方が儲かるのだ。
きり丸はまた小石を蹴った。本当につまらない一日だったと思う。
『ジュース飲みたいなぁ』
近頃、少し暑くなってきた。きり丸は家に帰る途中にそんな事を思っていた。そして、家に帰ったら半助にねだってみるつもりなのだ。こんなつまらない一日の最後に一つくらいいい事があるほうがいいだろうと思うのだ。でないと、今日の自分はかわいそう過ぎる。
「ただいまぁ」
なんだか元気のない挨拶になってしまった。
「お帰り、ちゃんと足、洗うんだぞ」
半助は部屋の中から声をかけた。これから、ジュースをねだるつもりだったのに、少しむっとしてしまった。このむっとが、これからのきり丸のついていない一日の続きが始まるスイッチだったとも知らずに。
「言われなくても分かってるよ!」
いつも言われないとしないくせに偉そうなきり丸。半助は苦笑いで
「分かってないでしょ」
なんて言っている。そんな半助の態度に、カチンときたきり丸は半助が用意してくれてあった手桶を蹴っ飛ばした。なんだって、今日はこんなに面白くない一日なんだろう。
そんな事をすればもちろん、怒られるのであって。
「こら!!」
すぐに半助が部屋から出てきてしまった。そして、すぐにきり丸を捕獲してしまった。
「離せよ!バカ!!」
きり丸は手足をばたつかせて暴れた。喉が渇いているせいでイライラしているのかも知れない。しかし、半助はそんな事は知らないもんだから、きり丸のおしりを一発叩いて
「悪い事したらなんて言うの!?」
と、きり丸に負けない大声で言い返す。いつも、いつもきり丸に甘い半助だけど、こんな乱暴な行為は許せない。してはいけない事だと思う。笑って済ませてやれる範囲を超えていると思うのだ。
「知らない!離せ!!」
きり丸はなおも悪態をつく。偉くご機嫌の悪いきり丸。こんなご機嫌斜め坊主はすこし反省させるに限ると思った半助は
「謝れない子はうちの子じゃないよ!!」
そう言って裏の戸口をぴしゃっと閉めてしまった。戸口が閉まったとき、きり丸は中庭に放り出されていた。
「開けろよ!バカ!!」
きり丸は戸口を叩いて抗議した。まだ、表は少し暗くなった程度。これくらいなら怖くないので強気なのだ。
「きり丸、きり丸はとっても悪い子だよ」
戸口の向こうから冷静な半助の声が聞こえてきた。『とっても悪い子』なんて言われると、なんだかグッと来る。だって、本当に悪い子だったような気がするのだもの。
『そりゃあ、桶はダメだったけど、うちの子じゃないなんてさ・・・』
きり丸はふて腐れた顔になった。本当は今すぐ謝ったほうがいいような気もするが、ちょっと謝りにくい。
「先生、あのね。お話があるの」
きり丸は謝らずして自分が反省していることを伝えようと思って提案してみたが、半助の返事は冷たいものだった。
「謝れない悪い子とはお話しない!悪い子は嫌いだのも」
半助はちゃんと分かっている。きり丸が愛想笑いで誤魔化して許してもらおうと思っている事を。そして、バイトのせいで機嫌が悪いことも分かっている。
でも、ちゃんと自分が悪い事をした時は謝れる子になって欲しいのだ。自分のした事に対して責任をもって対応して欲しいのだ。きり丸だっていずれは大人になる。その時に無責任な人間にはなって欲しくない。
半助の冷たい返事にきり丸はとっても悲しくなった。
『うちの子じゃない』
『とっても悪い子』
『嫌い』

どれもこれも、言われるととても悲しい言葉だった。きり丸の大きな釣り目から涙が落ちた。ちゃんと謝れば良かったと早くも後悔である。
戸口の向こうでは半助が眉根を寄せていた。今すぐにきり丸を許してやりたいのだけど、それは出来ない。
『早く謝ってくれ・・・』
半助だって辛いのだ。きり丸が辛いのはとても辛い。だから、一刻も早くきり丸が謝ってくれることを望んでいた。
しかし、そんな半助の思いなんて分からないきり丸は一人、中庭で泣いていた。
『先生・・・もう許してくれないかも知れない・・・』
そう、思うと後から、後から涙が出てくるのだ。こんな時、学校なら誰かが一緒に謝ってくれたり、山田先生が言ってくれたりするのに・・・。でも、ここは家なのだ。自分でなんとかするしかない。きり丸はもう一度、勇気をだして言ってみた。
「せ・・・先生、あのね、・・・うぅ・・今からね、ごめんなさいって言ったら許してくれる?」
涙混じりに聞いてみる。その声の不憫さと言ったら半助は今すぐにきり丸を抱きしめたい気持ちになった。が、ここは堪えた。
「ゆ・・・許してあげるよ」
思わず声がこもってしまった。半助だって泣きそうなのだ。
「ごめんなさい・・・」
きり丸は泣きながら言った。半助はゆっくりと戸口を開けて、きり丸を抱きしめた。
「うん、じゃあ家に入ろうか」
半助がそう言って優しく抱きしめてくれると、きり丸の我慢も限界で声を上げて泣き出した。さっきから、こんな風に泣きたかったのだ。でも、我慢した。だけど、今は我慢できないのだ。
「わーんあんあんあん」
きり丸は泣きたいように泣いた。半助が足を洗ってくれている間も泣いた。部屋に上がってからも泣き続けた。さっきの不安がこみ上げてくるのだ。
「先生、だっこぉ」
土間にいる半助にだっこを求めて泣いた。半助が自分を嫌いになってしまったっと思って不安に思ったのだ。
「はいはい、泣かないの。もう怒ってないでしょ」
半助は夕飯の準備をおいて抱いてくれた。抱かれると安心するのか、また涙が出てくる。
「先生・・・怒ったらやだ・・・」
半助にしがみついてそういう。半助はきり丸の背中をぽんぽんとしながら優しく笑った。
「きり丸が悪いから怒られたんだぞ」
これを聞いてきり丸は一生懸命に首を横に振った。だって、きり丸が悪いから怒られたと認めたら、半助が自分を嫌いになってしまうもの。悪い子は嫌いって言ってたもの。
「違う。俺、悪くない」
さっき反省して謝ったのにそんな事を言い出すきり丸に半助は笑いながら
「じゃあ、誰が悪いの?」
と、聞いてみる。泣きべそのきり丸は自分の足を指差して答えた。
「足・・だから、嫌いって言わないで」
なんてかわいい答えなんだろう。半助はまたきり丸を抱きしめた。本当に嫌いになれるわけなんてないのに。叱るのだって愛しているから叱るのに。
『おバカさんだねぇ』
半助はなんだかとっても幸せだった。イタズラ坊主で、ワガママで、手がかかって、泣き虫なきり丸。だけど、自分の事をこんなに求めてくれるきり丸。こんなに相思相愛でいいのだろうかと思うほどだった。
「そっか・・足が悪いのか・・・それじゃあ、仕方ないね」
半助はそう言って少し笑った。

その夜、きり丸は布団に入ってから
「先生、俺ってうちの子?」
なんて聞いてきた。夕方のことを心配しているらしい。こんな風に時間がたっても心配顔のきり丸を見ると半助はなんだか悪い事をしたような気になった。
「当たり前でしょ」
「よかったぁ・・・」

きり丸の声は心のそこから安心したようであり、その声がまた半助を切なくさせるのだった。
半助はきり丸のほうに寝返りをうって近づいていった。いつもはきり丸が半助の方に近づいてくるのだけど。
「きり丸、ごめんね。うちの子じゃないなんて言って」
そんな風に言われるなんて思ってもいなかったものだから驚いた。
「え・・・」
「だめだね、私は。もし、きり丸がうちの子じゃなくなったら悲しいのは自分なのにね」

驚いて半助の顔を覗き込んだ。その顔は真剣で、自分の事をからかっている様子はない。
「先生?変なの・・・」
なんていって言いか分からない。半助がこんな風な感じで話すのはとても珍しいのだ。
「先生、だっこしてあげる」
「だっこ?するのか?」
「違うよ、俺がだっこしてあげるんだよ」

そう言ってきり丸はぎゅっと半助を抱きしめた。一生懸命に手をのばしても半助の胴回りに手が届かない。半助がきり丸を抱くときはすっぽりと入り込むのに。
「先生・・・」
「うん?」
「悲しいときはずっとだっこしてあげるからね」

これはよく半助が言うのと同じだ。きり丸が泣き出したときに「ずっとだっこしててあげるからね」と。いつだって言葉どおり。きり丸が泣き止むまでだっこしててくれる。それはとっても優しい時間だ。だからこそ、半助にも味あわせてあげたいと思うのだ。
「ありがと」
きり丸の言わんとすることはわかっている。だからこそ、短くそう返事した。






あとがきです。
おひさしぶりです。
大阪より無事に帰ってきました。
今日からまた、よろしくお願いします。
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この記事に対するコメント

おかえりなさい。新作を楽しみに待っておりました。

こういうことってありますね。いやなことが重なってイライラして
またその不機嫌さを怒られる(た)みたいな。
でも先生は最後にちゃんと抱きとめてくれるからいいですね。
うちにも来てほしかった。


【2009/05/21 07:28】 URL | いちごチョコ #- [ 編集]

Re: タイトルなし
> おかえりなさい。新作を楽しみに待っておりました。
>
> こういうことってありますね。いやなことが重なってイライラして
> またその不機嫌さを怒られる(た)みたいな。
> でも先生は最後にちゃんと抱きとめてくれるからいいですね。
> うちにも来てほしかった。


ただいま帰ってまいりました。
コメント、ありがとうございます。

不機嫌さを怒られるってありますね。
私はもう30すぎなので、怒られる代わりに無視されます。
それって悲しいですわ・・・
怒られているうちが花・・・
【2009/05/21 16:17】 URL | ゆっち #- [ 編集]


私も30すぎです。多分同い年です。ビバ昭和!
怒られるうちが花…とも思いつつももう怒られたくないです(笑)多分逆切れしちゃう。
…でも土井先生になら叱られてもいい。
…残念ながら先生年下になっちゃいましたけど(笑)
【2009/05/21 19:45】 URL | いちごチョコ #- [ 編集]

Re: タイトルなし
> 私も30すぎです。多分同い年です。ビバ昭和!
> 怒られるうちが花…とも思いつつももう怒られたくないです(笑)多分逆切れしちゃう。
> …でも土井先生になら叱られてもいい。
> …残念ながら先生年下になっちゃいましたけど(笑)



わたしも土井先生、年下です。
って、言うか、25歳なんて遠い昔ですよね・
同い年なんて、同い年なんて!!
うれしいです!!
旦那は山田先生に迫る年齢です・・・・
【2009/05/24 19:50】 URL | ゆっち #- [ 編集]


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Author:となりのゆっち
忍たまのきりちゃん好きなゆっちが細々としているブログです。
昭和生まれの専業主婦(子供なし)なのですが、こんな私でよければひとつよろしく。
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