かわいいきりちゃん。
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網問の真実
きり丸はきらきらと光る春の海を見ながら目を細めた。少し眩しかったのもあるし、そうすれば遠くまで見えるかもしれないと思ったからだ。
「遠くまでみたいなら見張り台に行けばいいよ」
隣に座り込んでいた網問が声をかける。きり丸も背伸びをやめて座り込んだ。砂の上に直接座ると気持ちがいい。
「別に何か見たかったわけじゃないんだけどね」
「そうなの?」
「うん」

本当にそうなのだ。見たいものがあったわけではなく、何か見えるかもしれないだったのだ。その何がなんなのかきり丸だって考えていなかった。
「ふぅん。俺はね遠くを見るより水面を見る方が好きだなぁ」
網問は砂の中に足を半分くらい埋めながら言った。
「どうして?」
「さぁ?どうしてだろう?」

網問は笑いながら言った。誤魔化したわけではなく、網問だって本当にわからない。でも、船に乗っても遠くを見るより近くの水面をよく見る。もちろん、見張りの時はそうはいかないけど。
「酔わない?水面、見てたら」
きり丸は少ししかめっ面で聞いた。船酔いはしない方だが、あまり水面ばかり見ていると気持ちが悪くなる。
「ははは、酔わないよ。俺は海賊だもん」
網問はさも当たり前と言った風に言うが、きり丸は納得いかなかった。
「え~?だって、第三協栄丸さんは?」
兵庫水軍の総大将、第三協栄丸は船に乗るとすぐに気持ちが悪くなる体質だ。それでも一流の海賊でみんなから慕われている。
「お頭は・・・お頭だからね。仕方無いよ」
網問の言い分はよくわからない。わからないけどきり丸はもうそれ以上聞かなかった。だって、本当に「お頭はお頭だから」という言葉がぴったりなのだ。あの人は。
「網問さんは船酔いしないの?」
「うん、しないよ。ずっと小さい時から船に乗ってるからね。なれちゃったんだよ」

屈託のない笑顔は16歳。
「そうなんだ」
「うん。蝦夷を出てからずっと船で生活をしてるから」

網問は蝦夷と言った。だけど、きり丸は蝦夷なんて知らなかった。
「蝦夷って?」
「ああ、北の国だよ。俺、そこで生まれたんだ」
「俺はね、摂津。蝦夷って摂津より北にあるんでしょ」

きり丸は北の国がどれほど遠いものか想像もつかなかった。だから、自分の生まれた摂津より少々北にあるくらいに思っていた。
「ものすごく北にあるんだよ。北過ぎて冬は雪が積もって表にはでれないくらい」
さっき、遠くより近くを見る方が好きと言っていた網問が今は遠くを見ている。
「ふぅん、じゃあさ、なんで海賊になろうと思ったの?」
海賊という職種は特殊だ。きり丸がもう少し世間を知っていたなら聞かなかったかもしれない。
「え・・・それはね、夢を追いかけたんだよ」
はじめ驚いた顔をしたけど、すぐにいつもの網問の顔でそう言った。
「夢?」
「そうだよ。海は無限に広いからね。夢なんていくらでもあるからね」

網問の顔は夢を語る若者らしく輝いていた。自分より上にあるその顔を見上げながら
「へぇ・・・かっこいい!」
「かっこいい?そうかな?」

少し照れる。兵庫水軍の中では一番年下。そのせいで「かっこいい」なんて言葉には無縁なのだ。
「うん!俺が忍者になろうと思ったのはお金のためだもん!夢を追うって方が全然かっこいいよ!!」
興奮したきり丸は立ち上がった。そんなきり丸の手を握って網問はいつになく真剣な顔になった。
「お金のためだって悪い理由じゃないよ。それはそれで大事なことだと思う」
大人でもなければ子供でもない。そんな網問の意見はとてもしっかりしている。
「そうかな・・・夢を追いかける方がかっこいいよ」
きり丸はふてくされたような顔になって呟いた。そのふてくされ顔が可愛くって吹き出してしまった。
「なぁに?」
「ははは、ごめん。ごめん。あまりに可愛くってさ」
「もう、子供扱いして」
「悪かったよ。お詫びに本当の話をしてあげる」
「本当の話?」
「さっきはね、夢を追いかけてなんて言ったけどね、俺、本当は親に売られたんだ。人買いに連れてこられてこの瀬戸内海に来たんだよ。で、その人買いがあまりに嫌な奴だから逃げ出したんだ。でも、すぐにつかまってさ。その時、お頭が助けてくれたんだ。人買いから俺を買ってれたんだ」

さらっと話すにはあまりに重たい過去だった、だけど、網問はいつもと同じ顔をしている。親に売られた時はどれほど悲しかっただろう?人買いの仕打ちはどんなだっただろう?蝦夷が恋しくなはいのだろうか?
「・・・・」
きり丸はなんと言っていいかわからなかった。だけど、網問は笑いながら
「そんな顔しないでよ。親に売られたなんてさ癪だから夢を追って海賊になったって思うことにしたんだ。言い続けてればそれが真実さ!」
と、きり丸の背中をたたいた。海賊らしい荒っぽさ。
「それにね、俺、今は兵庫水軍で毎日、楽しんだから。お頭もいるし、兄貴たちもいるしね」
それは事実だった。はじめて蝦夷から船に乗せられた時は悲しくて悲しくて心が遠くに行ってしまいそうだった。だけど、今は毎日、楽しくて、忙しくてそんな事を思い出している時間なんてない。
「毎日、楽しいの?」
確かに今の網問はいつだって楽しそうだ。今朝、きり丸が訪ねてきたときも船の舳先を平均台にして遊んでいた。
「うん、兄貴たちに怒鳴れてばっかりだけどね」
それも確かだった。網問はその後、義丸に拳骨を落とされていた。
「俺も先生に怒られてばっかだよ」
きり丸は自分の境遇を言った。きり丸だって半助には毎日、怒られる。だけど、毎日が楽しいのも一緒だ。
「一緒だね」
「そっか!じゃあ、俺もなんかかっこいい理由を考えよ!」
「ははは、いいかもね」

2人は海を見た。やっぱり、春の海はきらきらときれいだった。




あとがきです。
今回は兵庫水軍の網問さんです。
網問さんが親に売られたかどうかはわかりませんが、この時代に一人、北海道からやってくるなんて通常ではなさそうだとおもいまして。
しかも若干16才!!
いろいろあったと思われます。

明日から実家に帰るため、しばらくお休みさせていただきます。
一週間ほどで戻る予定です。
よろしくお願いします。
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この記事に対するコメント

あの時代の独り立ちが何歳ぐらいなのかは分かりませんけれど、
北海道から一人でというのはちょっとわけありかもですね。
言われるまで気がつきませんでした。

実家へ帰省とのこと、
帰りを心待ちにしております。
【2009/05/12 16:09】 URL | セディール #- [ 編集]

Re: タイトルなし
> あの時代の独り立ちが何歳ぐらいなのかは分かりませんけれど、
> 北海道から一人でというのはちょっとわけありかもですね。
> 言われるまで気がつきませんでした。
>
> 実家へ帰省とのこと、
> 帰りを心待ちにしております。



ただいま帰ってまいりました。
大阪の街はみんなマスクをしていましたよ。
街じゅうのお店で「マスク完売しました」の文字が。

そうなんです。
あの時代の独立って何歳くらいからかわかりませんが、16歳で立派な海賊ってことはかなり早い独り立ち。
だって、学園の六年生が15才ですものね。
でも、小松田さんは16才ですね。
【2009/05/19 22:06】 URL | ゆっち #- [ 編集]


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