かわいいきりちゃん。
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もらい泣き
河原に座り込んだきり丸はちらっと隣を見る。
団蔵は今まで見たことないような怖い顔をしている。なんだか、声を掛け辛い。
きり丸は黙って足もとの小石を目の前の川に投げ込んだ。
ポチャン・・・
その音もとても寂しげに聞こえた。
『団蔵・・・』
もう一度、団蔵の方を見る。団蔵はやっぱり黙って川の流れを見つめている。
いつも、いつでも自分に気を使ってくれる団蔵。その団蔵がこんな風に黙ったままなのをきり丸はなんとかしたかった。
今度は立ち上がって小石を投げた。
小石はぴょん、ぴょんと二度、はねた。
「すごいね!きり丸!!」
いつもの団蔵ならそう言ってくれる。団蔵の方がうまいけど、きり丸の事をほめてくれる。
だけど、今日の団蔵は黙って見ていただけだ。
きり丸はまた隣に座り込んだ。
春の風が二人をなでて行く。
突然、家にやってきた団蔵。そして、きり丸をこの河原に誘った。来た時から様子がおかしかったけど河原に着いてからは、もう、まったくいつもの団蔵ではなかった。
「・・・・・」
きっと何かあったのだろうけど。それをきり丸に話すために馬を飛ばして来たのだろうけど。団蔵はその事を言わないし、きり丸もなんとなく聞けないでいた。
自分から聞くべきだと思う。だけど、こんな様子の団蔵には慣れていなくて声をかけられないのだ。
「・・・・きり丸」
川を見たまま団蔵が言った。
今まで黙っていた団蔵が急に話し出したので少々驚いた。とっさに返事を出来ずにいると
「きり丸」
もう一度、呼ばれた。
「ハイ」
今度は返事をした。きり丸の返事を聞いた団蔵は、それを合図にしたかのように話し出した。
「この春に仔馬が生れたんだ。オスでね。茶色い仔馬。能高速の初めての仔馬。俺ね、そいつに何かいい名前をつけようと思ったんだ」
話の内容と声のトーンが全然あってない。
普段のきり丸なら「仔馬が生れた」なんて聞いたらすぐにでも合わせてほしいとはしゃぐのだが、今日はそういう事はしない方がいいような気がして黙っていた。
きり丸が黙っていても団蔵は話続けた。
「何かかわいい名前とか、大きくなったときにかっこいい方がいいかとかいろいろ考えたんだ。俺さ、字がさ、下手だからさ。紙に書いてもあんまりカッコ良くないんだけどさ」
団蔵らしくないほどよくしゃべる。
「でもさ、せっかくの能高速の子供だからさ頑張ってさ。練習とかしたんだ。部屋中に墨飛ばしちゃってさ。父ちゃん、怒ってさ」
川から目を離さない横顔をじっと見つめる。無表情に近い顔から深い悲しみが見える。きり丸はこの話の結末を聞きたくなかった。だけど、団蔵はこの話の結末を話してしまわないと、この悲しみから立ち直れないのだと思って黙って聞いた。
「今朝さ、やっと綺麗にかけたんだ」
ここで団蔵は言葉を切った。団蔵が言葉を切れば、いよいよきり丸は何か言わなければ ならない。ここには二人しかいないのだから。
「うん・・・」
自分で言いながら自分が情けなかった。大好きな団蔵にもっと何か気の利いた事が言えなかったのだろうか。「うん」なんてちょっと賢い犬だって言いそうな返事だ。
きり丸がそんな事を考えている横で、団蔵はまだ川を見つめたまま
「うん」
と、きり丸の返事を繰り返した。同じ「うん」だったけどきり丸の「うん」よりずっと力強かった。
「うん。そうなんだ。だけどね、今朝ね、仔馬、死んじゃったんだ」
団蔵は今までで一番、真剣で力強い声で言った。きり丸に伝えることで自分の中で線を引こうとしたのだ。もう、これで悲しまない。もう、思い出さない。
「ま、馬借は馬が死んだからってイチイチ泣いてられないんだけどね」
ふっきるように大声で言ってから、初めてきり丸の顔を見た。
「きり丸・・・」
きり丸は泣いていた。団蔵を見つめて泣いていた。
「・・・泣くなよ。生まれたばかりの仔馬は弱いからよくあることなんだ」
手の甲で頬の涙をぬぐう。それでも、また涙が落ちる。
「生き延びれるかどうかは運次第なところもあるんだよ。仕方無いことなんだ」
「・・・・」
「泣いたってどうしょうもないんだ」
「・・・・」
「馬借なら誰だって経験するんだから」
「・・・・」

団蔵が何を言ってもきり丸は黙って泣いた。仔馬の死をきり丸に伝えたことを後悔した。きり丸は自分の悲しい記憶を呼び起したのかもしれない。団蔵は自分のうかつさを呪った。自分の悲しさだけできり丸のもとへ来てしまった事を恥じた。
「きり丸、ごめんね・・・」
「う・・・」

きり丸は何か言おうとしているらしいが声が詰まって聞き取れない。
「きり丸、泣かないで。いや、俺のせいで泣いているんだよな・・・」
「違う・・・団蔵のせいじゃない。団蔵のために泣いてる・・・」

涙を拭き拭き、やっとのことでそう言った。
「え?」
団蔵には意味がわからない。
「団蔵は馬借だから馬が死んでも泣けないんでしょ?だから、代わりに俺が泣いてるんだ」
大きなツリ目からぽろぽろと涙がこぼれる。この涙は自分のために流れている。素直に泣けない自分のために。
「きり丸・・・」
団蔵の目からも涙が一筋落ちた。
「団蔵は泣いちゃダメでしょ・・・」
「もらい泣きだよ・・・」







あとがきです。
今回はちょっと悲しいお話です。
きりちゃんの人間的成長を書いてみたくなったので。
先生相手ならきりちゃんは泣かなかったと思います。
だから若旦那で・・・
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この記事に対するコメント

去年の暮れに死んでしまったハムスターを思い出しちゃいました。
二年半という天寿を全うしたのですが、
「あれもしてあげたかった」「これもしてあげたかった」という気持ちはずっとありました。
団蔵の気持ち、ちょっと分かる気がします。
でも、仔馬も名前をつけてもらえてきっとうれしかったでしょうね。

きりちゃんは土井先生やは組のみんなに出会ったからこそ、
今回のことで涙を流せたのでしょうね。
それまでのきりちゃんだったらきっと泣かなかったでしょう。
漫画やアニメでも初期よりやわらかい性格になってますし、
「よかった」と最近思っています。
【2009/05/03 17:40】 URL | セディール #- [ 編集]

Re: タイトルなし
> 去年の暮れに死んでしまったハムスターを思い出しちゃいました。
> 二年半という天寿を全うしたのですが、
> 「あれもしてあげたかった」「これもしてあげたかった」という気持ちはずっとありました。
> 団蔵の気持ち、ちょっと分かる気がします。
> でも、仔馬も名前をつけてもらえてきっとうれしかったでしょうね。
>
> きりちゃんは土井先生やは組のみんなに出会ったからこそ、
> 今回のことで涙を流せたのでしょうね。
> それまでのきりちゃんだったらきっと泣かなかったでしょう。
> 漫画やアニメでも初期よりやわらかい性格になってますし、
> 「よかった」と最近思っています。



こんにちは。
いつもありがとうございます。
ハムちゃんも天寿を全うできて幸せだったでしょう。
昨今、ペットがよく捨てられてますよね。
ワニとトカゲが捨てられていて衝撃でした。
私は動物が大好きですが、今はマンションなので・・・

【2009/05/07 19:42】 URL | ゆっち #- [ 編集]


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忍たまのきりちゃん好きなゆっちが細々としているブログです。
昭和生まれの専業主婦(子供なし)なのですが、こんな私でよければひとつよろしく。
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