かわいいきりちゃん。
忍たまのきりちゃんメインのブログです。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

産女
半助は夕方の道をやや急ぎ足で歩いていた。
早く帰ってやらないといけない用事があるわけではない。家にはちゃんと留守番のきり丸がいて、しっかりと留守番しているはずだ。あの子はしっかりしている。心配はない。だから、ゆっくりと帰ってもなんら差支えはない。だけど、急いでいる。
きり丸が留守番しているからこそ急いでいる。
早く帰ってやらないと寂しがっているかもしれない。
早く帰らないとまたロクでもないイタズラをしでかしているかもしれない。
そんな思いがある。
だけど、本心は違う。
自分が一刻もはやくきり丸に会いたいのだ。
「ただいま!」
息を弾ませて「ただいま」という自分に笑いがこみ上げる。これでは普段のきり丸とまったく一緒だ。きり丸はバイトから帰ってくるとき、いつも駆け足のまま飛び込んでくる。息を弾ませて、ほほを赤くして。そして、うれしそうに。
「おかえりなさ~い!!」
笑顔で出迎えてくれるきり丸。その笑顔に気がなごむ。自分もきり丸をこんな風に和ませていることを願う。
半日離れていたきり丸は甘えて背中に乗ってきた。体重をすべて掛けるのは半助を信頼している証だ。
「先生、ご用はすんだの?早かったね」
「ああ、大急ぎで帰ってきたからね」

半助の返事に満足しながらも口では強がる。
「ふぅん。ゆっくりしてきてよかったのに」
「ゆっくりなんてしていられないよ。お前は目を離すとロクな事がない」
「そんな事言って。ホントは先生が寂しかったんでしょ」

半助は一度も「きり丸が寂しがっているから」とは口に出していない。出していないのに言うのは寂しかったのだろう。
「ふふふ、そうだよ」
かわいいきり丸に今日は折れてやった。
「甘えんぼ」
半助におんぶされているきり丸は嬉しそうに言った。おんぶされているのに「あまえんぼ」と人に言えたものなのか。そうも思うが相手は恋人とはいえ、まだ10歳。甘えんぼで当たり前なのだ。そのままおんぶで裏庭の井戸に行く。足を洗いたいのだ。急いで歩いてきたせいで砂埃を舞上げてしまった。
裏庭には朝、半助が干して言った洗濯物がまだ干しっぱなしだった。もう日は西のそらに入りそうな時間だというのに。
「きり丸、洗濯もの!」
「あっ!忘れてた!!」

まったく、バイトじゃないとなるとこれなんだから。お手伝いも宿題もすぐに忘れてしまうのに、バイトだけは忘れない。お利口なんだか、そうでないのか・・・
「よし、急いで取り入れよう。でないと産女に目をつけられる」
半助は背中のきり丸をおろして洗濯物を取り入れ始めた。今日は二人の分だけなのですぐに終わる。取り入れたものをきり丸に渡していく。
「よかった、まだ夜露はおりてないね」
よく乾いている洗濯物に頬を寄せて安心したきり丸。安心するときり丸はふと半助がさっき言った事が気になる。
向かい合って座ってたたみながら聞いた。
「先生、ウブメってなぁに?」
さっきは洗濯ものであわてていたが、初めて聞く言葉だ。
「ウブメはね、産む女って書くんだけどね。妖怪」
ちらっときり丸を見ながら言った。妖怪の話なんて怖がるかと思ったのだ。だけど、きり丸は身を乗り出す。
「どんな妖怪?」
家の中で半助がそばにいれば、話くらいは怖くない。いや、むしろ聞きたいくらいだ。
「女の人の妖怪。お産で死んじゃった人が成仏出来なくってなるって言われてるんだけどね。その産女はね、夜になっても干してある子どもの洗濯物を見つけてね、その子供をさらいに来るんだよ」
子供をさらいに来る。この場合、半助は大人だからさらわれるのは自分だ。そう思うとなんだか怖い。
「ねぇ、先生。今日は夕方だからまだ大丈夫だよね?」
「ははは、怖がりだな。大丈夫だよ。産女は妖怪だから夜しかこないんだよ」

あまり怖がらせるのはかわいそうと思って笑い飛ばしてやる。きり丸は安心した様子で一緒になって笑った。
笑ったが外が暗くなるとどうにも産女が気になるきり丸。
『産女ってどんな姿なんだろう?どこから来るんだろ?子供をさらってどうするんだろう?お産で死んじゃったってことはお母さんだったんだ・・・』
産女を怖いと思う気持ちと、どこかかわいそうにと思う気持ちがごっちゃまぜになってなんだか複雑だった。
「先生、産女ってさぁ」
奥の部屋で布団を延べている半助の背中に話しかける。
「なんだよ、まだ気にしていたのか?怖がりだなぁ」
振り返って呆れたような笑顔を見せる。
「怖いんじゃないよ。ちょっと気になるの。ねぇ、どんな感じなの?」
怖いくせに意地を張る。そんなきり丸のおでこにデコピンをくらわして舌を出した。
「もう話さないよ。寝る前にそんな話したら怖い夢、見ちゃうぞ」
こんな風に子供扱いされると余計に意地を張って聞きたくなる。きり丸はなおも食い下がった。
「だから、怖いんじゃないってばぁ。どんなの?」
「わかったよ。でも、話はトイレに行ってから。聞いたあとじゃトイレに行けなくなるぞ」

完全な子供扱いにふくれっ面になるが、ここは半助の言うことを聞いた方がいいような気がして黙った。意地を張って話を聞いてトイレに行けなくなってオネショ。そんなのカッコ悪すぎるじゃないか。
おとなしく寝る準備をするきり丸を見ながら半助は悩んだ。
『どこまで話すかな・・・』
産女の話はなかなか怖い描写がある。それをきり丸に話していいものか。きり丸自身は
「怖い夢なんて見ないよ」
と言っているが、どうだろう。夜中に泣きだすかもしれない。そうなれば、かわいそうだし、自分もつらい。やはり、ここはある程度しか話さない方がいいだろう。
一つの布団に寝転がってきり丸の背中をなでながら話しだした。
「産女はね、さっきも言ったようにお産で死んでしまった女の人がね、自分の赤ん坊に未練を残してなってしまうんだよ。だからね、自分の赤ん坊を探し歩いているんだ。それで、小さな子どもの洗濯物を見ると、その家の子供をさらって行っちゃうんだよ。自分の子と間違えてるんだね」
半助の話はかなり簡素化している。その話では納得できないのか、きり丸の方から質問がでた。
「ふぅん。で、さらってどうするの?」
「大事に育てるらしいよ」

これは本当の話。
「産女ってどんなカッコなの?」
きり丸としては産女の姿形を知っておきたいと思うのだが、半助は言い渋った。
「・・・私が読んだ本では寝まきで腰から下が血に染まっていたけどね。でも、それはその本の作者が書いたもので、本当はどうかわからないけどね」
なるべく薄っぺらい情報として与えた。それでも、きり丸は少しおびえた顔になる。「血に染まっている」なんて子供には刺激的すぎるらしい。
おびえ顔のまままた聞いてくる。
「どこから来るの?」
「・・・お墓かな。でも、これだってねぇ。どうだかねぇ」

極力軽いノリで話した。もうこれ以上はきり丸に聞かせるべきではない。だけど、半助の気持とは裏腹にきり丸は完全に「怖いもの見たさ」になってしまっている。
「お墓からどうやってくるの?」
「さぁ。私はあったことないもの。産女なんていないと思うよ」

はぐらかすことにした。でないと、今夜は寝かせてもらえないかもしれない。一晩中、だっこ、だっこと言うかもしれない。
「お産で死んだらみんな産女になるの?」
「それはどうだろ?私はお産で亡くなった人も知らないしね」

そうならないように、お産で死んだら腹を裂いて子を取り出し抱かせて埋葬する。それはよく聞く話。だけど、目の前で怯えるおチビにそれは言えない。腹を裂く。そんな単語はこんな時間には禁句だ。いや、こんな時間じゃなくてもダメだろう。
「先生、あんまり知らないの?」
「だれだって知らないさ。本当にいるかどうかだってわからないしね」

半助は普段よりずっと軽い口調だった。怖がらせるのは嫌だった。
だけど、きり丸はすっかり黙ってしまった。黙ったままじっと天井を見ている。
「きり丸、もう寝なさい。産女なんていないからさ」
それでも、黙っている。やれやれと思い、半助は起き上がってきり丸を抱き上げた。
「だから聞かない方がよかったろ?」
自分の胸にきり丸の顔をしっかりとくっつけて少し強く抱く。そうすればいつも落ち着いてくれる。怖い夢で泣いたときでも泣きやんでくれる。
「・・・かわいそうだね」
きり丸は小さな声で言った。きり丸の意図がわからなかった半助は顔を覗き込む。
「かわいそうだと思う。だって、自分の赤ちゃんに会えないで死んじゃうなんて。それで、死んでも探してるなんて。かわいそう」
これを聞いた半助は言いようのない気持ちになった。確かに産女はかわいそうだ。この世への、赤ん坊への未練は計り知れない。
きり丸の親もそうだっただろう。きり丸一人残していくのは寂寞の思いだっただろう。
「そうだな。かわいそだな」
もう少し気の利いた事を言いたかったが今の半助にはそれで精いっぱいだった。これ以上、なにか言うと泣けてくる。しかし、自分が泣くわけにはいかない。腕の中の小さなきり丸が我慢しているのだ。自分も涙は見せれない。
きり丸は半助の顔を見上げる。泣いてはいないけど、泣いているように見える。この優しい人はきっと自分の親の事を思っている。この人がそれを思う時いつでもこの顔だ。
「先生、泣かないで。俺の父ちゃんや母ちゃんは俺が幸せなのを見て天国に行ったよ、きっと。もう、俺の事は先生にお願いしますってさ」
きり丸は元気な声だ。それはカラ元気ではなく。いつもの元気な声。きり丸は本当にそう思っているのだ。自分は今幸せだし、それを見て両親は安心して天国に行ったと。そして、天国に行った人にはもう二度と会えないこともちゃんと分かっている。それをわからせてくれたのも、それを受け入れさせてくれたのも今、自分を大事そうに抱いて、自分のために涙をこらえている人なのだといことも分かっている。
「そうだな。そうだった。そうだから私はお前をしっかり幸せにしないとな」
半助はもう一度、つよく抱きしめた。泣いている場合ではない。過去には何もない。あるべきなのは二人で作る幸せな未来だ。
「よし、そうと決まったらもう寝なさい!明日からビシバシと新学期の予習だ!」
急に元気なってとんでもないことを言い出す半助。きり丸は驚いて声を上げた。
「ええ?それって俺の幸せとは関係ないじゃん」
幸せどころが勉強嫌いのきり丸にとっては不幸せである。一体、どうしてそうなるのか?
「何言ってんだよ!知識という財産はな、なにがあってもなくならない財産なんだぞ!」
「そんな財産いらない!俺が欲しいのは小銭だけ!!」

結局、いつもの言い争いになってしまった。だけど、その方がずっといい。しんみりとしているなんて自分たちには似合わないもの。お互いがそう思って、声をあげて笑いあう。
布団の上で転げまわって息が詰まるほど笑って。それがいつもそこにある幸せだった。






あとがきです。
こんにちは。お久しぶりです。
今回は妖怪のお話です。
ウブメってもっと難しい漢字で表現している場合も多いですが「産女」のほうがわかりやすいかなぁと思いまして。
私は最近までこの妖怪を知らなかったのですが有名な妖怪らしいですね。
赤ちゃんに未練を残しているのはかわいそうだなぁと思いまして。
調べによりますと中国出身らしいですね。
あまり詳しくなくてすみません。
スポンサーサイト

この記事に対するコメント

お帰りなさい

旅行は
楽しかったですか?


産女なんて妖怪聞いた事ないです

無知なんですよね
【2009/03/17 18:49】 URL | チカ #- [ 編集]


おかえりなさい
私も産女は知らなかったです。
夜な夜な飴を買いに来る女幽霊なら知っていますが・・・。
女は今も昔も、「子」というものにやはり強く興味を抱く生き物のようですね。
その強さが、一人の人間を育て上げる力になるのでしょうかね?
生意気言っちゃってゴメンナサイ^^;

今回の旅行では子宝を願ったとの事、
私も微力ながらゆっちさんの子宝を祈っております。
気候の変化が年々激しくなっていますが、
お体にどうか気をつけてくださいね。
【2009/03/17 19:01】 URL | セディール #- [ 編集]

Re: タイトルなし
> お帰りなさい
>
> 旅行は
> 楽しかったですか?
>
>
> 産女なんて妖怪聞いた事ないです
>
> 無知なんですよね



ただいま帰ってまいりました。
旅行といっても寝る場所は実家なのですが。
でも、楽しかったですよ。
楽しかったのでいつかきりちゃんにもどこかに旅行を楽しんでほしいと思います。

産女って案外、メジャーではなかったんですね。
すみません。見た目は普通の女の人に見えましたがそれじゃ妖怪じゃない・・・
【2009/03/18 18:37】 URL | ゆっち #- [ 編集]

Re: タイトルなし
> おかえりなさい
> 私も産女は知らなかったです。
> 夜な夜な飴を買いに来る女幽霊なら知っていますが・・・。
> 女は今も昔も、「子」というものにやはり強く興味を抱く生き物のようですね。
> その強さが、一人の人間を育て上げる力になるのでしょうかね?
> 生意気言っちゃってゴメンナサイ^^;
>
> 今回の旅行では子宝を願ったとの事、
> 私も微力ながらゆっちさんの子宝を祈っております。
> 気候の変化が年々激しくなっていますが、
> お体にどうか気をつけてくださいね。


ありがとうございます。
今年こそは妊娠したいものです。
と、願い続けてもう10年あまり・・・
切ないものです。
この思いがあるからこそ、女は子供に未練があるんでしょねぇ
男もある人はありますね。

飴を買いに来る女の幽霊ですがわたしも知ってます!
私が知ったのはジャポニカ学習帳に書いてあったからですが。
今ってジャポニカってあるんですかね?
【2009/03/18 18:41】 URL | ゆっち #- [ 編集]


この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://tonarinoyutti.blog109.fc2.com/tb.php/366-3119d0b4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

となりのゆっち

Author:となりのゆっち
忍たまのきりちゃん好きなゆっちが細々としているブログです。
昭和生まれの専業主婦(子供なし)なのですが、こんな私でよければひとつよろしく。
「友達になってやるか」って心やさしい方募集中です。



最近の記事



最近のコメント



月別アーカイブ



カテゴリー



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



最近のトラックバック



カレンダー

10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -



小さな天気予報


-天気予報コム- -FC2-



FC2カウンター



フリーエリア



フリーエリア



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する





上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。