かわいいきりちゃん。
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同じ色の涙
「ね、先生。ここ飛び越えられると思う?」
二人で散歩の帰り道、少し川幅のある小川を指差してきり丸は問う。川幅は調度、きり丸の身長位。もちろん、半助自身は飛び越える自信があるが、きり丸はと言うと無理だろう。
「きり丸は無理なんじゃないか?」
「出来るよ!!」

半助の返事に気を悪くしたようだった。「きり丸は無理」って事は「半助は出来るがきり丸は無理」という事なのだから。きり丸は川に向かってジャンプする体性になった。
「やめとけ、やめとけ。川にはまったら冷たいぞ」
「はまらないよ!見てて!」


ドボン!!

きり丸は勢いよく水しぶきをあげて川にはまった。浅い川なので溺れる事はなかったが、この季節に川にはまるのは相当にきつい。
「ほら、早くあがっておいで」
半助は今も川に座り込んでいるきり丸に手を差し出す。きり丸は冷たさと悔しさとで半べそになりながら半助の方に両手を出す。髪も服もびしょ濡れで、カタカタと振るえている。
「だから言っただろう。お馬鹿」
「先生ぇ。だっこぉ」

自分がびしょ濡れにも、かかわらずだっこをねだる。その姿があまりにもかわいそうなので抱いてやる。抱き上げられると大声をあげて泣き出した。自分が悪いけど、寒いし辛い。そして何より悔しい。
「はいはい。早く帰ろう」
「う~」

まだ、しゃくりあげているきり丸を抱いて急ぎ足になった。早く着替えさせないと風邪をひかしてしまう。びしょ濡れのきり丸を抱いている自分の服も濡れてきているので、そちらもなんとかしたい。
 川からの風はつめたい。冷たい風がきり丸の濡れた髪をなでていく。あまりの寒さに半助の首筋にぎゅっと抱きついて震える。
「先生。寒い・・・」
「当たり前だよ。頭からつま先までびしょ濡れだもん」


 家に帰り着くと、まずきり丸の服を脱がし、寝間着を着せる。もう、今日は他に出かける予定も無かったし寝間着で充分と判断したからである。きり丸は半助が着替えさせてくれている間中、ずっとしゃくりあげていた。
「ほら、腕、通して」
てきぱきとなれた手つきで着せ、最後に帯紐をぎゅっと締める。
「もう大丈夫だから泣くな」
そう言って、きり丸のおしりを軽くぽんぽんと叩いた。
「う・・・先生が叩いたぁ」
それをきっかけにまた泣き出す。とにかく泣きたいらしい。
「痛く叩いてないだろう?」
半助はきり丸の着替えが終わると自分も着替える。それから、土間で飴湯をいれてやる。半助が土間から戻ってきてもきり丸はまだ泣いていた。
「泣き虫だなぁ」
そう言って、赤ん坊にするように横抱きにきり丸を抱いて、飴湯を飲ましてやる。いつもなら、すぐに「赤ちゃんじゃない」と言って怒るが今日は大人しく半助の手から飴湯を飲む。半助にとっては、そんなきり丸がかわいい。
「先生・・・」
しばらくして泣き止んだきり丸が静かな声で話し掛ける。
「先生。前にも川に落ちたよ。でも、その時は泣かなかったよ」
「どうして?」
「だって独りだったから。誰も助けてくれなかったから」
「ふーん」

半助は軽く「ふーん」と言って受け流した。それしか出来なかったのだ。過去のきり丸をどんなに抱きしめてやりたくても、現在の半助にはどうしようもない。それに、何か喋ったら涙がでそうだったから。
「でも、今日は先生がいたから泣いちゃった」
「うん」

「独りだと強くなれて、先生といると泣き虫になるね。でも、俺は泣き虫でも先生といたい」
「うん」
きり丸の手の甲に涙が落ちてきた。自分はもう泣きやんでいるのに。ひとつ、ふたつと涙が落ちてくる。
「先生、泣いてるの?」
「うん」
「泣かないで」
「うん」

それでも、きり丸の手には涙が落ちてくる。きり丸は半助の顔を見上げることができなかった。なんだか、見てはいけないような気がしたのだ。自分の泣き顔は三日と空けず半助に見せている。でも、半助の泣き顔は見たことが一度も無い。それでも、今、半助が泣いている理由は、言葉には出来なくとも分かっているつもりだ。
「先生も俺といると泣き虫になるね・・・」
「うん。それでも一緒にいよう」
「うん。先生と俺の涙は同じ色の涙だからね」

きり丸には上手く言葉に出来なかった。自分の知っている言葉を全部使っても、今の二人には足りない気がしたから。
「遠くて切ない…」
半助はそう言った。今、きり丸は自分の膝にいる。それでも、いくら抱きしめても、いくら甘やかしても、あの日のきり丸の涙を流させてやることは出来なのだ。小さな子供がたった一人、寒さに震え、冷えた体を温める場所もなく、涙を流すこともできずにいた。その小さな子供は、自分の大切なきり丸で。その小さな子供は、自分のこの世で一番大切なきり丸で。
「遠くて切ない・・・」
半助は同じ事を繰り返した。どうしても、どうしても、自分がまだ、あった事のないきり丸が切なかった。いま、腕の中にいるきり丸と、その日のきり丸は繋がってるのに、今の自分とその日のきり丸は繋がっていない。
「先生・・・」
「ん?」
「先生、言ってたでしょ?過去は変えれないけど、未来は変えれるって」
「うん」
「俺の未来は誰より、幸せだよ。先生と一緒だから」
「・・・・・」

返事の変わりにまた、小さな手に涙が落ちてきた。それから、大きな手がサラサラの髪をなでた。
「先生、泣かないで」
きり丸は半助の胸板に頬をぴったりとくっつける。こうしていると、辛かったことが遠い昔のことに思えてくる。悲しかったことが、いつの間にか全部過去になっている。言葉としては分からないが、どんな事でも過ぎ去ってしまえば過去になる事を分かっていた。それを、分からしてくれたのは、今の幸せをくれた半助なのだ。
「きり丸、私の方が幸せだよ。きり丸がそう言ってくれるから」
「・・・・・先生、お腹空いた!!」

急に元気に立ち上がったきり丸。そんなきり丸に半助も元気な声で
「夕飯は何かおいしいものを食べようか!」
なんて言ってみる。すると、きり丸は眉根を寄せて憎まれ口。
「贅沢覚えて!安月給の癖に!!」
「言ってくれるねぇ」

二人は過去はともかく今は幸せだった。そして、これから先の未来もきっと幸せなはずなのだ。人はそう思って強くなる。悲しいことがあると、「今より悲しい事は起きないから大丈夫」と自分を慰め、いい事が起きると「運が向いてきた」と張り切る。こんな事を繰り返して強くなる。
「だいたい、俺達は贅沢しないのがヒドクなんだからさ!」
「言ってくれるねぇ。でもひどくじゃなくて美徳だろ?」
「言ってくれるねぇ」

きり丸は声を上げて笑った。もう、過去なんて追いかけてこない。それをちゃんと知っている。きり丸につられて半助も声を上げて笑った。これから先のきり丸に辛い思いがありませんようにと祈りながら。








あとがきです。
今日は泣きべその先生です。
人は涙の数だけ強くなれるというので、先生は今日、ひとつ強くなりましたね。
私はつらい出来事は必ず自分を強く、優しくしてくれると信じているのです。

最近、なんだかネタ切れでして。
そんなわけで書けないときもありまして。
うむむ。由々しき問題と思っております。
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この記事に対するコメント

二人で涙を流した分、きっと今までよりもお互い大事な存在になれるのでしょうね。
ゆっちさんの「つらい出来事は~」というのはとても感動しました。
確かに私もうつ病から回復した今(あぁ、嫌いにならないでくださいね・・・)、
精神的に苦しくなっている人に対して、昔より優しくなったような気がします。

ネタ切れとの事ですが、無理して毎日更新しなくても大丈夫なのですよ。
こういう時はどうも頭が回らなくなりますよね・・・
どうでもいいときにはすぐに考えられるのに^^;
私も絶賛スランプ中で、3月の末に締め切りの小説が書けてません。
コンクールなので(落選するのだろうけれども)、締め切りが厳守なんので
そろそろやばいです・・・^^;

久々に思いついたネタをどうぞです。
・きりちゃんに甘酒を飲ませてしまう利吉さん
・乳歯が抜けるためグラグラしていて気になっているきりちゃん
・歯医者さんに行きたくなくて逃げちゃう平成きりちゃん
・おねしょしちゃって干している布団を友達に見られちゃってピンチ!な平成きりちゃん

また思いついたら書きますね。
【2009/02/17 17:57】 URL | セディール #- [ 編集]


いつもコメントありがとうございます。
そして、今回はネタまで!!
なんだか、催促したような形になってすみません。
でも、ほんとうにありがたいです。
さっそく、使わせていただいたいと!!

それにしても、セディールさん。
大変でしたね。
うつ病は命にかかわる病気ですから。
実は私の友達もかかってしまい、普段は何ともないように見えるのに突然、落ち込んだりしていました。
見ていてとてもつらそうで苦しそうでした。
些細なことに悩んでしまうって事でまた悩み、なかなか抜け出せなくなっていました。
彼女の原因は失恋だったのですが、それだけではないようで複雑なようでした。
でも、今は明るく前むきにがんばっていますよ。
セディールさんも元気そうでよかったです。
【2009/02/18 12:08】 URL | ゆっち #- [ 編集]


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Author:となりのゆっち
忍たまのきりちゃん好きなゆっちが細々としているブログです。
昭和生まれの専業主婦(子供なし)なのですが、こんな私でよければひとつよろしく。
「友達になってやるか」って心やさしい方募集中です。



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