かわいいきりちゃん。
忍たまのきりちゃんメインのブログです。
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鉄棒
「よっと!」
もうすぐ、日の落ちそうな校庭で三人は鉄棒で遊んでいた。きり丸は鉄棒は得意で、上手に前回りだって、後ろ回りだって、逆上がりだってやってみせる。
「きりちゃん、上手だね」
乱太郎は感心して誉めてくれる。
「簡単さ!」
「いいなぁ・・・」

体を動かす事はたいてい苦手なしんべエ。鉄棒も苦手なひとつだった。前回りも後ろ回りも逆上がりも何にもできない。
「鉄棒とさ、体をさ、しっかりとくっつけるんだよ」
そう言って、クルクルと連続して前に回る。そんな風に言われても、体の重いしんべエには無理な話である。第一、きり丸の言うように鉄棒と体を近づける事が出来ないのだから。
「一度でいいからきり丸みたいにクルクルって回りたいなぁ」
「しんべエ・・・一度出来たらずっと出来るんじゃない?」

冷静な乱太郎。きり丸は今度は後ろ向きにクルクル回っている。
「簡単なんだけどなぁ・・・」
「僕には無理だよ」

最初から諦めているしんべエ。運動のことについては、よくこんな態度を取る。きり丸はなんだか、自分ばっかりクルクルと回っていて申し訳ないような気がしてきて、ストンと鉄棒から下りた。
「もう、ご飯だからさ」
こんな風に遊びをきり丸から切り上げるのは珍しい。たいていは乱太郎が言い出すのだ。その時に
「あと一回だけ」
っていうのがいつものきり丸。
 三人は薄暗くなりかけている校庭を駆け出す。「ご飯」と聞けばお腹がすくのだ。
「あっ、俺の手、金気くさい!!」
食堂できり丸は大きな声で笑い出す。さっきまで鉄棒で遊んでいたのに手をしっかりと洗わなかったので、掌から鉄のにおいがした。
「え?私、しないよ?」
乱太郎が自分の掌を嗅いでみる。その横でしんべエも同じようにしている。
「僕もしないけど?」
「するって、ほら!」

きり丸は自分の掌を二人に向けて広げてみせる。二人は素直にきり丸の掌をクンクンと嗅いでいる。なんとも、間抜けな光景であった。
「な?金気くさいだろ?」
「本当だ。きり丸って鉄の匂いがする」

しんべエは感心しているが、乱太郎は困ったような顔になる。
「きりちゃん、ちゃんと手を洗っておいでよ」
「平気、そんなに気にならないから」

きり丸はひらひらと手を振って見せる。その手をしっかりと掴まれてしまうなんて思いもよらなかったのだ。
「こら。お腹がいたくなるぞ」
「先生・・・」

手を掴まれた時、なんとなく誰だか分かっていたので驚かない。こんな風に目ざとく自分の行動に気が付くのは土井半助に決まっているのだ。
「平気だよ。洗ったもん」
目の前にご飯があるのに、わざわざ表に出て手を洗いに行くなんて面倒くさい話である。きり丸はきっと、「ダメだ」と言われるだろうと思いながらも、一応、申し出てみる。万が一、もしかして、「そうだな」と言うかも知れないので。
「ダメだ」
やっぱり、「ダメだ」の方だった。それでも、まだ何か言い返そうと口を開きかけると、椅子から抱き上げられてしまった。
「先生、やめてよ」
家では嬉しいだっこなのだが、学校では恥ずかしい。乱太郎やしんべエが見ている。それだけではない、他の生徒や先生だって見ている。きり丸は半助の腕の中でバタバタと暴れた。
「離して!離してってばぁ!!」
「だったらちゃんと手を洗いに行くか?」
「行く!行くから離して」

半助の腕から解放されたきり丸は扉の所で
「先生のばーか!」
と悪態をついてから出て行った。せっかくのご飯がさめてしまう。ぶつぶつと文句を言いながら、食堂に戻ってくると、半助と目が合った。その目は『ちゃんと洗ったか?』と聞いている。きり丸はふて腐れた顔で手を振ってみせる。
『洗いましたよーだ!』
本当に悔しいったら。自分はまだご飯を食べていないのに、半助ときたら、もう既に食べているのだ。きり丸は半助がよくやるように、口を少し出して目を見開く。いわえる「めっ!」の表情だ。そんなきり丸を見て、半助は反省するどころか、笑っている。
 きり丸はそんな半助は無視をして、乱太郎たちの座っているテーブルに戻った。
「きりちゃん、ちゃんと洗った?」
「先生みたいな事、言うなよ」

同い年の乱太郎にまでそうな風に言われるなんて。
「ごめん。さ、食べよっか」
「僕、お腹すいたぁ」

二人はきり丸が戻るのを待っていてくれたのだ。家では半助だって、いつでも待っていてくれる。きり丸がどんなに遅く帰っても待っていてくれる。今日、先に食べたのはきっと、乱太郎としんべエが待っていてくれたから。
「ありがと」
照れてしまって、ぶっきらぼうになってしまうけど、ちゃんとお礼が言えた。半助はそんなきり丸が嬉しかった。
「いえいえ」
しんべエは笑顔で答え、もうお箸を握っている。少し冷めてしまったけど、今日のご飯はいつもよりなんだかおいしかった。嬉しい気持ちの分、きり丸も半助もおいしかった。
「きり丸はさ、鉄棒が上手いから手に鉄の匂いが残ったんだね」
「しんべエより大分、鉄棒を握っている時間が長いものね」

乱太郎はきり丸よりは下手だが、しんべエよりは上手といった腕前だった。
「どうしてかな?僕が一番、力があるのに」
「きっと、体が重いんだよ」

乱太郎の意見はもっともである。体が重くて丸いしんべエは鉄棒は不向き。軽くって背の高いきり丸は向いているのが普通である。
「そんなの知ってるよ!」
しんべエは少し気を悪くしたように乱太郎に言った。知っているなら「どうしてかな?」なんて言わなきゃいいのになんて思った乱太郎だが口には出さなかった。
「しんべエ、明日さ、いい事してやるよ」
きり丸はいつもの得意の八重歯の見える笑顔である。きり丸がこんな顔をするのは何かお金儲けを思いついたときか、イタズラを思いついたときだ。今回は、きっとイタズラのほうだろう。
「いい事ってなに?」
「いい事はいい事さ!しんべエだって鉄棒でクルクル回れるようにしてやるよ!!」
「え?本当?でも、僕、厳しい特訓って嫌だなぁ」
「大丈夫!特訓なんて無しで回れるさ!きりちゃんに任せとけ!!」

自信たっぷりなきり丸。一体、どんな秘策があるのだろう?そして、しんべエに鉄棒を楽しんでもらうだけなのにどうしてイタズラな顔になったのだろう。乱太郎もしんべエもきり丸の計画が全く分からなかったが
『なんだか嫌な予感』
と、だけは分かった。

「しんべエ、これ着ろよ」
きり丸が鉄棒の前で差し出したのは大人用の着物。
「その着物で鉄棒が上手くなるの?」
しんべエは半信半疑の表情で着物を受け取る。乱太郎だってきり丸の意図がわからずにポカンとしている。
「これでさ、鉄棒を持ってさ、くるくるって回るんだ。要するに体が重いから下に行った時に地面に落ちるわけだろ?でも、これで支えていていれば大丈夫さ!」
しんべエも乱太郎もまだポカンとしている。きり丸の説明では分からないのだ。じれったくなったきり丸は、しんべエから着物を取り上げ、自分が着てみた。先ずはお手本を見せようというのだ。
「こうやってさ、着物の上から鉄棒もつの。それでさ、おしりを着物で支えて、こう!」
説明とともにきり丸はクルッと一回回って見せる。
「なっ!簡単だろ?」
「本当だ!僕、やってみたい!!」

しんべエは急に張り切った。もちろん、乱太郎だってやってみたいので、
「え〜、私もやってみたいよ」
なんて言っている。じゃんけんの結果、乱太郎が先。しんべエが後になった。
二人とも上手に回って見せる。特にしんべエは大喜びで、何度も繰り返した。
「鉄棒って回れるとたのしいねぇ」
しんべエにとっては新発見だったようである。二人の友達に喜んでもらえたきり丸も満足だった。
その後、三人は着物で鉄棒を散々、楽しんだ。
「お前ら、鉄棒、好きだねぇ」
西の空が真っ赤になるころ、半助に声を掛けられる。乱太郎としんべエは笑顔で
「先生、見て!」
なんて言って回って見せるが、きり丸は一人、コソコソとその場から離れようとした。もちろん、見逃してもらえるわけも無いのだけど。しっかりと、半助の右手に襟足をつかまれる。
「きりちゃん?先生?」
「きり丸、何で逃げるの?」

二人はきり丸が逃げようとした意味を知らない。と、言う事は、明らかにきり丸一人の犯行だった。まぁ、大体こんな事を思いつくのはきり丸にきまっているのだから。
「いや・・・別に・・・」
きり丸は誤魔化そうとしているが、そんな都合のいい世の中ではないのだ。
「それはな、乱太郎が来ている着物が私のだからだよ」
「え?これ?」

乱太郎は慌てて着物を脱いだ。しかし、時、遅く、わきの下がほつれている。乱太郎は慌てて謝る。
「先生、すみません!」
「僕達、先生のだって知らなかったんです」

しんべエの謝り方にきり丸は内心、舌打ちする。もちろん、しんべエはきり丸を先生に言いつける気なんてサラサラ無い。そんな事、きり丸だってわかっている。
「わかっているよ。どうせ、きり丸が昨日の手を洗ってきなさいって言われた仕返しに思いついたのさ」
半助はきり丸の思いついた動機までよく分かっていた。右手できり丸を引き寄せ、左肩に担ぎ上げる。腹ばいに担ぎ上げられたきり丸はまるで囚われの狸のようだった。
「先生はきり丸に話があるから、お前達は先にご飯を食べてなさい」
このままではきり丸はきっと、叱られるだろう。乱太郎としんべエに出来る事はただひとつ。
「先生、きり丸だけが悪いんじゃありません」
「きり丸は僕の為に考えてくれたんです」

二人の必死さに半助もほだされる。ここで、きり丸を許さないほど、半助はわからずやでもなく、怒っているわけでもなかった。
「じゃあ、きり丸がごめんなさいって言ったら許してやろう」
「・・・・・」

たった、一言、謝れば許されるのに、なかなか謝れないきり丸。半助相手だと時々、こうなってしまう。納得いかない時なんてもちろんそうだが、ちょっと威圧的に言われるだけでもダメな時がある。
「きりちゃん、ごめんなさいって!」
なかなか言わないきり丸に乱太郎の方が焦ってしまう。
「きり丸、言ってごらん!ごめんなさい」
しんべエも妹に言うときの口調になってきり丸を促す。そんな風に言われるとなんだかますます言いにくいきり丸なのだった。
「きり丸、どうする?今、ごめんなさいって言うか、おしりを叩かれてごめんなさいって泣くかどっちがいい?」
半助はきり丸がもし、謝らなければ「おしりを叩く」と宣言している。結局、謝るなら今、謝ったほうがお得である。きり丸の大好きなお得だのだから、素直に謝るがいいに決まっている。
「・・・・ごめん」
「ごめんなさいって言ってください」

半助に訂正される。悔しさを噛み締めながら
「ごめんなさい」
やっとの思いで言った。半助はきり丸のおしりを一発叩いてから下ろしてやった。
「きり丸、よかったねぇ」
事の成り行きをハラハラしながら見ていたしんべエはもう自分が泣きそうであった。きり丸は謝ったのに、おしりを叩かれて悔しかった。だから、半助の背中に向かって思いっきり
「先生のばーか!!」
半助は振り返って、口を少しだして、目を見開いた。
『めっ!!』







あとがきです。
今回、きりちゃんが御披露した技は懐かしのスカートまわりです。
皆さん、子供の時にしましたでしょうか?
私もよくしました。
親から破れるので
「夏の制服では禁止」
と、言われていましたが小学校は制服なので掟を破りしていました。
でも、一度も破れなかったです。

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忍たまのきりちゃん好きなゆっちが細々としているブログです。
昭和生まれの専業主婦(子供なし)なのですが、こんな私でよければひとつよろしく。
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