かわいいきりちゃん。
忍たまのきりちゃんメインのブログです。
大きくなったら
「せんせい・・・」
半助は夜半に情けない声で起こされた。自分を覗き込むきり丸の顔つきは眉をハノ字に下げた情けないお顔。
「情けない顔しちゃって・・・どった?」
夜中にこんな顔をするのはだいたい決まっているんだけど。
「お布団、冷たくなっちゃった・・・」
「あらら。じゃあ一緒に寝ようか?」

きり丸の頬をなでながら優しく言った。
「うん」
「でも、その前にお着替えしようね」

半助はそう言って起き上がった。本当はきり丸一人でもちゃんとお着替えできるのだけど、こんな風におねしょの時は着替えられないのだ。甘えん坊のきり丸。
「ねぇ、先生、誰にも言わないでね」
きり丸は恥ずかしそうにそう言ってきた。明日は利吉が来るのだ。だから、利吉に言わないでねといいたいらしい。
「言わないよ」
半助は箪笥をゴソゴソとしながら笑った。そして重大なことに気がついた。
「あ〜、寝間着が無いんだった」
「え〜!」

半助の声にきり丸が反応する。今朝、着替えた寝間着を今日は洗濯しなかったのだ。きり丸の寝間着は二枚。一枚は洗濯籠に突っ込んであって、もう一枚は今着ている濡れたものだ。
「先生!どうしてお洗濯、サボったの!?」
きり丸はえらそうに言ってきた。そもそも今朝、着替えたのだって、朝ごはんの時にお味噌汁をひっくり返したせいなのに。
「だって、今日は婦人会のご用があったんだもん」
「もう!俺、どうやって寝るの?」

きり丸はお冠だ。だって、着るものがないなんて。困っちゃう。
『おねしょの癖にえらそうに・・・』
そう言ってやりたいのを堪えて半助は自分の寝間着を取り出した。
「今日はこれで寝て。大きいけど裸ん坊よりはいいでしょ?」
半助は手早く濡れた寝間着を脱がせて、自分の寝間着を着せた。着せてみると予想以上に大きい。きり丸の足はすっぽり見えなくって、肩だって落ちてしまう。
「え〜!やだ!」
半助の提案をきり丸は真正面から否定する。だって、半助の寝間着なんて大きすぎる。きり丸が着たら袖も丈も大きくてまるで赤ん坊の産着のようだった。半助から見ればそれはそれでかわいらしいのだけど、こんな「赤ちゃんっぽい」のは、きり丸は許せない。
「やだ!俺の寝間着!!」
きり丸は得意の無理難題を吹っかけてくる。
「ないもん。それが嫌なら、濡れたのか、汚れたのだよ。どっちにするの?」
「先生がお洗濯しないからでしょ!だめでしょ!」

きり丸はグズグズと言い始めた。半助はそんなきり丸のおしりを軽く叩いて
「いいじゃないか、赤ちゃんみたいでかわいい、かわいい」
と、相手にしなかった。
「俺、赤ちゃんじゃないもん!」
怒りまくるきり丸をだっこで布団に入れる。これ以上、夜更かしはしたくない。半助は目先を変えることにした。
「よちよち、今日はだっこでねんねしようか?」
「俺、赤ちゃんじゃないもん!!」
「今日は赤ちゃんでいいじゃない。おねしょもしちゃったしさ」

ちょっと痛いところを突かれてしまったきり丸。赤くなってはいるが何か言い返さないと『生意気チビ』と普段から言われている名が廃るとうものだ。
「・・・赤ちゃんはオムツだからおねしょしないもん」
きり丸としては精一杯の言い返し。確かにきり丸の言うとおりだと思って半助は笑ってしまった。
「そうだね。赤ちゃんじゃないからおねしょしちゃったんだよね」
きり丸はぶかぶかの寝間着を気にしている。
「先生、やっぱり大きいよ、これ」
思いっきり手を伸ばしても手が手がでない。足もまったく布団に触れない。
「きり丸が小さいんだよ」
自分には袖だって、丈だってやや短いのに、きり丸には大きいなんて。改めてきり丸の小ささを確認する思いだった。
「先生が大きいんだよ」
小さいなんて言われたくないきり丸は言い返す。だって、自分はクラスではそんなに小さいほうじゃない。乱太郎より少しだけ大きい。しんべエよりもかなり大きいのだ。まぁ、団蔵や虎若より小さいんだけど。
「私は大人だからね。そのうち、きり丸だって大きくなるよ」
「ふ〜ん、今はなんだって先生の方が大きいよね」

きり丸は半助の胸の辺りに顔を寄せてくる。こんな風に一緒に寝ていると甘えたい気持ちになるのだ。その髪を優しく撫でながら半助は
「そうだなぁ」
と、のんきに言った。
「先生の手だって俺よりずっと大きいね」
きり丸は半助の手をとって確かめる。自分と比べるととてつもなく大きい。まるで、もみじとやつでくらいの差があるのだ。
「だからお碗、大きくても落とさないね」
きり丸は今朝のことを言っているらしい。今朝、お味噌汁をこぼしてしまったのは、きり丸の手には大きすぎるお椀のせいだった。
「小さいお椀、買わないとなぁ」
半助はしみじみと言った。もともと、ちゃんときり丸用のお椀があったのに。今朝見るとなくなっていたのだ。どっかのイタズラ猫が持って行ってしまったらしいのだ。だから、今朝から大人用のお椀を使っているのだ。
「買わなくていいよ!」
きり丸は慌てて言った。
「どして?きり丸のお椀、なくなっちゃったよ」
「だってさ、大人用だとお味噌汁、いっぱい飲めてとくじゃん!」

なるほど。どんなとこからでも得をしたいらしい。きり丸の思考回路に半助は笑ってしまうのだ。小さいお椀がなくなって、大人用のお椀を使った今日一日、お味噌汁をたくさん飲めてよかったらしい。
「でも、お味噌汁、たくさん飲んだからおねしょしたんじゃない?」
半助は今日のおねしょの心あたりを言ってみる。お味噌汁は汁物で、塩気が案外強い。それを夕飯の時も大人と同じ量を飲んだのだから。いつものきり丸のお椀に比べて倍ほど多い量だった。当然の結果なのだ。
「・・・・やっぱりお椀、買って」
「明日、買いに行こうね。ついでに寝間着も買おうかな・・・」
「先生の寝間着?」
「きり丸の。私の寝間着は切り丸の寝間着よりずっと洗濯の回数が少ないから痛まないんだけどね」

そう言っておでこを突付く。これから、冬になったら洗濯も厳しい。一枚くらい予備があったほうがいいような気がするのだ。
「お椀買ったら、もうおねしょしないもん・・・」
きり丸はそう言って半助の体に手を回して引っ付いてくる。半助から顔を見えないようにしているのだ。なんだか、かわいい。
「先生、やっぱり大きいね。手が回らないよ」
きり丸は半助の胴回りに手が届かない。
「手が届くようになったらきっとおねしょもしないさ」
半助は優しく背中を叩いた。もうきり丸が眠くなっていることが分かる。眠くなると半助の胸元にすりすりと擦り寄ってくるのだ。こんな風に顔をくっつけるのは眠いときだ。
「今だってもうしない。今日はちょっと間違ったの・・・」
半助が背中を叩いてくれると急速に眠くなってしまう。本当はもっときっちりと否定しておきたいが、眠くてそれどころではない。背中を叩いてくれる手の大きさにやっぱり
「先生の手、大きいね・・・」
と、思った。思ったのか、実際に口に出して言ったのか自分でも分からない。それくらい眠かった。
「おやすみ、赤ちゃん」
そう言って、半助の唇がまぶたに触れたのが最後であった。後はもう夢の中。赤ちゃんじゃありませんよって言いたかったけど。夢の中ではどうしょうもなかった。
きり丸のかわいい寝顔をしばらく楽しんでから半助も目を閉じた。自分だっていつまでも夜更かししていられない。なにせ、明日は朝から洗濯がまっているのだから。







あとがきです。
今日は夜の短い間の出来事です。
私は二人が一緒に暮らしている感のある「なんでもない日常」を考えるのが結構好きです。
まぁ、逆に言えば事件が思いつかないんですが・・・
事件好きな方にはつまんないですね。
それにしても事件と言えば名探偵コナンですね。
よく毎回、毎回、事件が思いつくなぁって感心しちゃいます。
正直、専業主婦の日常って事件が起こらないのですよ。

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Author:となりのゆっち
忍たまのきりちゃん好きなゆっちが細々としているブログです。
昭和生まれの専業主婦(子供なし)なのですが、こんな私でよければひとつよろしく。
「友達になってやるか」って心やさしい方募集中です。



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