かわいいきりちゃん。
忍たまのきりちゃんメインのブログです。
よその子
「きり丸、はかまが反対だぞ。だらしないなぁ」
この一言がいけなかった。余計な一言は人間関係を悪化させるとはよく聞く話だ。
きり丸は露骨に気を悪くした顔になって
「わかってるよ!そんなの!!」
そう言って慌てて履き替える。朝から「だらしない」なんて言われて面白くない。せっかく、自分ひとりで着替えたのに。
「先生、口うるさいんだから!」
本当に余計な一言は人間関係を悪くするのだ。半助はカチンときてしまった。
「だらしないのはみっともないんだよ!!」
ぐずぐずと着替えるきり丸のはかまの帯を結んでやろうとした。が、きり丸は半助の手をぱちんとはらって
「自分でできる!!チビじゃないんだから!!」
と、怒り顔。
「なら、さっさとしなさい!いつまでもぐずぐずしてるんだから」
こうなってしまっては、二人はすっかりと険悪な雰囲気になってしまった。
今日はせっかく二人でお団子を作ってみるつもりだったのに。利吉が仕事先で買ってきてくれた「手作りお団子セット」を試すのをきり丸はとっても楽しみにしていたのだ。もちろん、半助だってきり丸とは違う意味で楽しみにしていた。きり丸がよろこぶだろうなぁと思って。
「いただきます」
「いただきます」

どんなに険悪な雰囲気になってもご挨拶はちゃんとする。それが二人のルールだった。向かい合って朝ご飯をたべる。気まずい・・・
半助はちらっときり丸をみた。きり丸は膨れっ面で食べている。こんな場合、大人の半助の方が気まずさは大きいようである。
『楽しくないご飯させてるなぁ・・・』
なるべく楽しい生活をさせたい。そう思っている。もちろん、きり丸が嫌いな勉強やお手伝いだってさせなければならないがそれ以外は楽しく暮らしてもらいたい。だから、ご飯を作るのもなるべくきり丸の好むような味付けにするし、寝る前だって甘やかしている。
「ご馳走様!」
何も会話がないままにきり丸はお箸を置いてしまった。その膨れっ面に半助は油を注いでしまった。
「きり丸、イリコが残ってるよ。食べなさい」
これもいつもどおりなのだけど、今日はよくなかったらしい。きり丸はつり目をますますつり目にして
「食べない!!おいしくないもの!!」
そう言っておわんを半助の方に押し寄せた。
「おいしいだけがご飯じゃない!!」
いくら機嫌が悪いと言ってもしつけはしつけなのだ。譲れない。
「そんなの食べるの家だけだよ!よそは残してるよ!」
「よそはよそ!うちはうち!」

半助は最早、口癖になっている言葉を言った.こんな事は言われなれすぎているきり丸の心にはノーダメージだ。
「うちって貧乏なんだから!お金持ちなら食べないよ!!」
確かに裕福ではないがはっきりと貧乏と言われると心にダメージ大の半助だった。きり丸の言うお金持ちと言うのはしんべえの家だろう。つい、最近、遊びに行ってきたのだ。
「そんなによそがいいならよその子になりなさい!!」
しかし、負けられない。こんなことでいちいち負けていてはきり丸と家族や恋人はやってられないのだ。半助だってきり丸にダメージを与えれる事を言った。
「先生の馬鹿!!」
よその子になりなさいと言われて言い返せなくなったら、不貞腐れて奥の部屋に逃げ込んだ。そして、部屋に内職を広げ始めた。こんな日に限って内職の日なのだ。できれば、アルバイトの日の方がよかった。今は半助と一緒にいたくない。
『先生の馬鹿!俺がよその子になったら困るくせに!!』
乱暴にアイスのカップを作りながら思う。きり丸はちゃんと売り言葉と買い言葉で言われたと理解しているようだった。
『俺がよその子になったらどうかしら?』
きり丸はふと思う。もし、自分がよその子になったら?
『どこの子になろうか?』
山田先生の子になろうか?
山田先生がお父さん・・・。前に利吉さんが昔の山田先生は怖かったって言っていた。利吉さんでも怒られるのに、自分だったらどれくらい怒られるだろうか?
それに、もし、山田先生の子になったら利吉さんと兄弟になる。兄弟になったらどうだろう?小松田さんのお兄ちゃんみたいに優しくしてくれるだろうか?庄左衛門のようにおんぶしてくれるだろうか?
もしかして、意地悪されたりして・・・
一人っ子のきり丸にとって兄弟は未知数だ。それに出来れば弟よりお兄ちゃんになりたい・・・
じゃあ、しんべえの家の子になったらどうだろう?
しんべえには妹がいるからお兄ちゃんになれる。それって、素敵じゃないか?カメ子ちゃんならかわいいし、しっかりしているからいいんじゃないか?
自分の事を「お兄さま」なんて呼んでくれるかもしれない。しんべえはそう呼ばれていた。ちょっとうらやましいのだ。そんなしんべえが。
それに、しんべえの家はお金持ちだし。
『でもな・・・』
ふと、思う。いつか、しんべえは「パパはカメ子ばかりかわいがる」って怒っていた。妹がいたら、自分はかわいがってもらえないのだろうか?
それは困る。
自分だって甘えたいときがあるのに・・・
きり丸は甘えると言えば頭の中で半助になる。半助がカメ子ちゃんを抱いて自分をだっこしてくれないことを想像してしまった。それじゃあ、しんべえの家の子になっていない。カメ子ちゃんがきり丸の家の子になっている。
そんな事には気が回らないきり丸は、あわてて首を振った。
「だめだめ!やっぱりだめ!!」
「何がだめなの?」

慌てすぎて声が出ていらしい。隣の部屋から半助が声をかけてきた。
「あ・・・」
きり丸は改めて半助をしみじみと見た。
『俺がよその子になったら先生、どうするんだろう・・・』
今朝はケンカしちゃったけど、普段はとっても仲良しな半助。もし、自分がよその子になったらどうするんだろう?悲しむだろうか?それとも『うるさいチビ』がいなくなって喜ぶだろうか?
「どったの?真剣な顔、しちゃって」
半助はもうすっかりとケンカのことは気にしていない様子。そうなれば、きり丸だって話しやすい。
「あのね・・・俺がよその子になったら、先生、どうする?」
それでも、おずおずと聞いた。
「そんなの真剣に考えてたの?」
「うん」
「きり丸、よその子になりたいの?」
「ううん。なりたくない」

きり丸は素直に言った。本当は意地をはって「なりたい」と、言いたいところだが、もうケンカは嫌だった。
「だったらそんなの考えなくていいよ」
「どって?」
「きり丸がなりたくないなら、よその子にはならないよ。ずっと、うちの子だ」

半助はそう言ってきり丸を膝の上に乗せた。綺麗でまっすぐの髪が調度、あごに当たる。気持ちがいいのだ。
「・・・・・」
膝の上でちょっと変な顔になる。涙が出そうなのだ。
「だって、私はきり丸がよその子になるなんて嫌だもの」
半助はかまわずにそう言った。正直な気持ちなのだ。もし、きり丸が
『土井先生は口うるさいから山田先生の家の子になる』
と、言って出て行ったら自分も山田家に移り住むことだろう。それくらいの勢いできり丸と離れられない。
「じゃあ、なんで・・・」
きり丸はさっき、半助がよその子になればいいと言った事を聞こうかと思ってやめた。そんなの聞かなくてもわかっている。ケンカの勢いで言った言葉に決まっている。
「なんで、さっきよその子になりなさいって言ったの?だろ?」
きり丸の代わりに半助が言った。自分が言いかけたことを指摘されてちょっと恥ずかしく、膨れっ面のふりをした。
「そんな事、知ってるもん。先生は俺が好きなんだもん」
きり丸は膨れっ面になりながらそう言った。そんな膨れっ面のほっぺを触りながら半助は笑った。きり丸のほっぺは丸くてやわらかい。
「わかってきたな!」
半助としては嬉しい答えだった。いつも、いつも、流れる川のように絶え間なくきり丸に向かって愛情を注ぎ込んでいるのだ。その愛情が伝わっているという手ごたえを感じるのだった。
「だって、俺、もう大きいんだよ!ちょっとの事でメソメソするようなおチビじゃないもん!」
得意気のきり丸。そうなのだ。もう大きいのだ。だから、半助がケンカの途中で言ったことなんていちいち泣いていられない。
「ははは、そんな風にいつも大きかったら楽なんだけどね」
そう言いつつも、もし、きり丸がいつも聞き分けのよい子供になってしまったら、一番淋しいと感じるのは自分だと自覚がある半助だった。正直、きり丸にはまだまだ手のかかるおチビでいて欲しい。大変だけど、寝る前にはだっこを求めて欲しいし、膝にも乗ってきて欲しいのだ。
「いつも大きいよ。だってもう一年生だもん」
「ホントかぁ?後でお買い物に行くけど、だっこ、だっこって言わない?」

言って欲しいからこそ、こんな事を言ってしまう半助。やっぱり、きり丸の甘えん坊は半助のせいかもしれない・・・
「お買い物のときはちょっと小さいの。だって、まだ一年生だもん」
照れた表情がかわいいのだ。うまく「もう一年生」と「まだ一年生」を使い分ける。まだまだだっこが大好きな一年生。時々は赤ちゃんになりたい一年生。
「うまいこと言うなぁ、さすがは、うちのきり丸だ!」
「うん!俺、よその子じゃなくて、うちのきり丸だからね!!」








あとがきです。
まぁ、なんて平和なお二人。ケンカの発端も実にくだらないですね・・・
10歳のきりちゃんはともかく、先生25歳です。そんなケンカしてていいのでしょうか?
でも、恋人同士のケンカや、夫婦喧嘩ってめっちゃくだらないことから始まりますよね。
私が思うに恋人は「ヤキモチ」、夫婦は「金がらみ」が多いと思います。
イヤン!!夢がない!!

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忍たまのきりちゃん好きなゆっちが細々としているブログです。
昭和生まれの専業主婦(子供なし)なのですが、こんな私でよければひとつよろしく。
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